心に届く歌







【高等部正面出入り口】と彫られた石碑を通り過ぎ、校内案内図を見て保健室を探す。

出入り口から保健室は近かった。




ノックをし、開けると、中には髪を後ろでお団子に結んだ、少し小太りなおばさんが立っていて、

わたしを見つけていやらしく笑った。




「ソレイユ様。わざわざありがとうございます。
彼、だいぶ具合が良くなったみたいですよ」


「……ずっと見ていてくれたんですか?」


「ええ勿論(もちろん)。
アタシ、保健室の先生だもの。

具合が悪くなってしまった生徒さんを見るのは、アタシの役目だものね」


「……そうですか」




わたしはシエルにそっと近づく。

シエルは薄めの布団を目元まで隠すように被っていた。




「シエル……どうして来たんですか?」


「え?」


「どうして具合悪くなったんですか?
わたし、具合悪いしか聞いていなかったので、詳しく知らないんです。

見ていたのなら、わかりますよね?」


「……熱が出て、授業中に保健委員に運ばれたんですよ」


「熱……ですか。
吐き気とかってありました?」


「え?……ないみたいよ。
休んだら良くなったみたいだわ」




わたしは大きく溜息をついた。




「よくわかりました。
あなたが保健室にいなかったことが」


「え?」


「わたし、彼の友達から彼の具合が悪いからって連絡貰ったんです。

友達から事情聞きましたけど、具合悪くなったのは朝ですし、吐き気が酷かったことを言っていたんです。

わたしが訪ねてきたことを知って、急いで来たんですね」




団子結びおばさんは黙り込む。

図星、かぁ。




「具合の悪くなった生徒さんを見るのがアタシの役目、か。
笑わせないでくれる?」


「…………」


「保健室に先生がいなかったこと、きっちり先生たちに報告させていただきます。

本当に具合が悪くて、救急車を呼ぶ事態の生徒が来た時、先生がいなくて対処出来ずに亡くなったとか、そんなのシャレになりませんからね。

しっかり自分の仕事ぐらいしてください」




わたしはシエルを見た。




「シエル、帰ろう」




シエルは今起きたかと思えないぐらいむくりと上体を起こすと、

ゆっくり立ち上がった。

わたしは傍に置いてあったシエルの鞄を持ち、何も言わずに保健室を出た。