『そんな尊敬していて、信頼しているエルちゃんの好きを迷惑だと言ったこと、シエルがすっげぇ気にしてる。
多分言われたことねぇんじゃねぇの?
“お前なんて死ねば良い”って暴言吐かれたとか言っていたから、
子どもに暴行するような親に“好き”なんて言われたことねぇから、
初めて言われて戸惑って、迷惑だって言ったんだと思う。
好きとか愛情とか必要ないとも言っていたから、
言われたことねぇから害だとか言ったんだと思うぜ、俺は。
シエル自身の本心だけど、それはシエルの悲惨な家庭が原因だってこと、エルちゃんわかってやってくれよ』
「……そうだよ。
シエルが言うわけないよ。
シエルは相手を否定するような人じゃない」
雨の中倒れているのを見つけたあの日から、わたしはシエルを見てきた。
だから、わかる。
自分を否定することはあっても、相手を否定するようなことを言うことはないって。
「ありがとうアンス。
わたし、アンスに頼んで本当に良かった」
『俺も、エルちゃんから朝の電話があったから、シエルのこと少しだけど知ること出来たから。
俺の方こそお礼を言うべきだ。
ありがとうなエルちゃん』
「アンス。今シエルはどうしてる?
具合ってどれぐらい悪いの?」
『エルちゃんに言われて、シェフに頼んで朝ご飯持って教室行ったら、シエルすげぇ腹の音鳴らしてた。
多分朝食抜きでだいぶ腹減っていたんだろうな。
サンドイッチあげたら、半分ぐらいでもういらないって渡されて、そうしたら青白い顔でトイレに行くとか言うから、
サンドイッチが入っていたビニール袋渡したら戻し始めたんだ。
保健室連れて行って、昼に様子見に行ったら、すっごい吐いてた。
出すものねぇのに吐き気は治まらないって感じだった。
色々話した後も、1回戻して、今は疲れて眠ってるよ。
俺に色々話してくれたから、多分話し疲れたんだろうな』
「そう……」
お腹鳴らしていたなんて。
やっぱり朝学校で用事あるなんて嘘だったんだ。
『最後に戻した時も、エルちゃんの好きを迷惑だと言ったから、吐き気と言う罰が下ったんだって泣いてた』
「……シエル…」
『俺の予想だけど、多分このままエルちゃんと話さないと、シエルの具合は悪いままだと思うから。
ちゃんと話し合ってみろよ』
「うん……ありがとうアンス。
わたし今からシエルのこと迎えに行くよ」
『わかった。
先生のことは俺に任せておいて』
「お願い。
アンス。
これからも親友としてシエルのこと支えてあげて。
同性の友達も、必要だと思うから」
『わかった。
エルちゃんも、自分の気持ち正直に伝えてみろ。
一部しか聞いていないけど、シエルが自傷行為をするほど悲惨な人生だったのは。エルちゃんでもわかるだろ?
シエルの両親のこと俺聞いた時、ドクさんと一緒に複雑だって言っただろ。
多分その時にはシエルのこと、わかっていたんだろ?』
「でもわたしもほんの一部なの。
シエルが虐待に合っていたこととか、
まだ10歳にも満たないのに働いていたこととか、
ティラン伯爵の元で働いていたこととか……。
具体的には知らないの」
『俺、10歳にも満たないで働いていたこと知らねぇぞ』
「え!?
全部知っていると思ったわ」
『ティラン伯爵様の所で働いていた時にクビになって、エルちゃんに助けられたって言っていたのは聞いたけど。
エルちゃんの方がシエルのこと知っているじゃねぇか』
「…でも直接聞いたわけじゃ……」
『それでもシエルのこと、エルちゃんはわかっているよ。
しっかり話し合ってみろ』
「……ありがとう。アンス」
わたしは通話を終え、家を出て、
運転手に学校へ行くよう伝え、シエルを迎えに行った。



