☆アンスside☆
「僕さ……中心街出身じゃないんだよね」
世間話でもするかのように言ったシエル。
俺は危うく聞き逃しそうになった。
だって、あまりにも当たり前と言う風に言うから。
「僕はさっきも言ったけど村出身。
最北端のノール村って知っているかな?
そこで育ったんだ」
ノール村。
夏でも夜は一桁になると言われている超寒い村。
中心街から離れすぎているため、発展が遅れていると聞いたことがある。
離れているため、犯罪も結構多いとかっていうのも聞く。
「僕、両親がいなくて、2歳頃まで施設で育って、3歳になったぐらいの時に、今の両親に引き取られて、セレーネって名字になったんだ」
シエルの話は、まるでテレビを見ているように感じた。
あまりにも淡々と話すから。
「でもそこでの生活はお世辞でも良いと言えなかった。
両親は賭け事が好きで、お酒も大好きで。
何かある度、僕のせいだって殴られて蹴られて。
“お前なんて死ねば良い”って暴言とかも吐かれて。
こういうこと、本で知ったんだけど、虐待って言うんだよね」
シエルはクスクス笑うけど、俺には無理矢理笑っているようにしか見えなかった。
「お酒が好きだって言ったけど、
お酒が入ると本当に誰も手が付けられなくなって暴れて、
いつかこのまま殴られて死ぬんじゃないかって考えてた。
だけどいつになっても死ぬことはなかった。
多分両親も少しは手加減していたんだろうね。
僕が死ぬと、ストレス発散道具とか愚痴をぶつける相手がいなくなるから。
今考えると、僕の存在している理由って、多分それだけだったんだろうなぁ」
シエルの目から涙が流れる。
だけどシエルは拭いもしなかった。



