「お嬢様。失礼致します」
ドクがグイと扉を左に押し込む。
扉が簡単に開き、おばさんが狭い靴置き場に倒れこむ。
「ドクありがとう。お邪魔します!」
わたしは倒れているおばさんの横を通り、土足で家の中に踏み込んだ。
壁は全て襖(ふすま)で覆われ、床は全て畳張り。
畳の上を靴で歩くのは忍びないけど、緊急事態だと無視する。
小さな部屋がいくつもあり、わたしは片っ端から扉を開けた。
「き、貴様何だ!」
お酒の瓶を何本も置き、真っ赤な顔でラジオを聴いていたおじさんが叫ぶ。
ラジオから流れているのが賭け事の実況中継で、本当に賭け事が好きなのだなと思う。
「シエルはどこですか?」
「は!?」
「あなたの息子、シエルはどこですか!?」
息子と言ってもシエルはセレーネ家の養子。
でもちゃんとした息子なはずだ。



