そうアヤカに促され、おばさんからも「よかったら聴かせてくださいな。」と促され、僕は渋々、ギターを手に取った。



 このギターはかなり愛されているようで、修理されている跡があった。弦こそ、短くカットされていないものの、味のある70年代っぽさが出ていた。レフティーモデルであったが、問題ない。ギターに表も裏もないのだ。



 僕は軽くキュンキュンキュンと音を鳴らしチューニングを済ませると、アヤカとおばさんに軽く会釈をし、拍手が止んだところで一曲歌った。アヤカへと贈る古い曲で、このギターももしかすると、前の持ち主に弾いてもらった曲かもしれない。歌は上手い方ではないが、関係ない。歌は気持ちだ。僕は気持ちを込めて歌った。すると、周りの従業員や外国人の客も集まってきた。アヤカとおばさんはうっとりした表情を浮かべ、曲が終わると周りにいた全員が拍手をしてくれた。



「これ、なんて曲なのかしら?」



 アヤカの問いに僕が答えようとすると、おばさんが少し早く、



「『22才の別れ』でしょう?」



 そう言った。僕は頷いた。



 それから「アンコール」に答え、今度は、ノリのいい曲を選んだ。女子十二楽坊の「自由」だ。



 周りの人は手拍子をし、外国人客に関しては、さも愉快そうに踊り始めた。白人、黒人、東洋人の輪ができていて、その中でアヤカもステップを踏んで踊った。みんなそれぞれ違う振り付けで、初対面関係なく踊った。



 僕のギターの周りで、国も人種も違う人たちが「自由」という名の下に平和を作っていた。小さな輪ではあったが、ここには確かに世界平和が出来ていた。白人男性と黒人女性が手を繋ぎながら踊る。アヤカと韓国人留学生が楽しそうにステップを競い合う。日本人の僕が中国の曲をテンポよく弾く。僕は何だか嬉しくなった。音楽で世界は一つになれるなんて所詮綺麗事だと思っていた。しかし、それは間違っていた。あったんだ、ここに。



 音楽で世界を一つにしたその日、僕はますます音楽が好きになった。