「そうねえ。まあこれといった目的はないんだけど、強いて言えば、老後のためかしらね。」



 海苔弁当の海苔の部分を割り箸で剥がしながらアヤカが言う。中におかかが敷き詰められているのを確認すると、また海苔を被せた。



「老後のこととかもう考えているわけ?」



「まあ、結婚費用だったり、子供の養育費にも充てたいわね。何かとお金かかるから。」



「そんなこと今考えたってしょうがなくないか?」



「あるわよ。」アヤカは言った。



「あるじゃない。ほら、しょうが。」



 僕の生姜焼きを箸で一つ掴んで、僕の眼前で揺らす。面白くない。