アヤカはバイトを始めて以来、夕食のほとんどをコンビニで買ってくるようになった。食卓には、生姜焼き弁当や海苔弁当が並び、たまにちょっと高めな高級焼き肉店とコラボした焼肉弁当が食卓に並ぶこともあった。



 アヤカは中でもロースカツ丼が好きで、週に4日はロースカツ丼を食べた。身体によくないコンビニ弁当とはいえ、こうして食費が浮くのは非常に有り難かった。



 たださすがに毎日弁当漬けでは飽きてしまう。それならばと、アヤカはパスタやカップ麺を買ってくるようになったが、それも次第に飽きていった。



「久しぶりに寿司か焼肉でも食べに行かないか?」



「ダメ。節約しないと。」



 アヤカはいつも「節約」と言ったが、アルバイト代に加え、週に10万近くの送金があるにも関わらず、何を節約することがあるのだろうか。彼女は一体何を買うつもりなのだろうか。理解できなかった。



「仮にキミが節約したお金でマンションを買うとする。で、そのマンションに僕は住むことになるのか?」



「なるでしょうね、おそらく。だって、私はあなたのことが好きだから。あなた以外の誰かと結婚する気はないし、あなた以外の誰かに身体をあげることは、一夜限りでもないわ。あなたと一緒に目黒の超高層マンションに住んで、そこで子供を作って、子供が独立して、そのマンションを子供に渡して、私たちは伊豆か軽井沢か、鎌倉にでも別荘を買って、プードルをそうねえ……ティーカップからスタンダードまでの全種類を飼って、ゆっくり余生を楽しむの。」



 悪くないと思った。だが、



「マンションを相続させるのに、相続税ってものがかかってくるだろ? それは、子供にとって負担になるんじゃないか? ……え? マンションを買うのか?」



「あなたが仮にって言ったからそうなるでしょうねって話よ。それに、死後3ヶ月以内であれば、遺産放棄もできるのよ?」



「じゃあ、本来の目的はなんだ?」



「節約する理由?」



 僕は生姜焼きを一切れ食べながら頷いた。