アヤカと暮らし始めてから、僕の生活は大きく変わった。



 週に4日大学へ行き、講義が終わると、電車に揺られながら今頃、59000円のアパートでアヤカがどう過ごしているのか想像する。



 大抵は、ベッドで本を読みかけたまま昼寝をしているか、煙草を吸いながらケータイをいじっているか。バスタブに浸かりながら、ミッシェル・ガン・エレファントの「ゲット・アップ・ルーシー」を歌っていたこともあった。



 アヤカは大学にほとんど顔を出していない……いや、まったく顔を出していないようだった。僕が講義へ向かう時は、いつも「いってらっしゃい。」と見送ってくれたし、帰ると「ただいま。」と言ってくれる。



 非常識のようにも見えるが、今のこのご時世では、典型的な大学生なのかもしれない。大学に入るために勉強をする。そして、入った達成感に浸って勉強をしない。そのまま大学院に行くか、適当なところに就職して、上司からはちやほやされる。ちょっと怒られれば、翌日から来なくなるのが今の新入社員だと大学の教授は言う。



 僕からしたら、高い学費払って何をやっているんだと、デモ活動の如く、アヤカのような大学生に抗議したい。しかし、そんなことに時間を使うくらいなら、六法全書をペラペラめくっている方が割に合っている。



 自分さえよければそれでいい。そんな考えじゃダメだと高校までのどの先生も言っていたが、こればかりは自分さえよければそれでいい。