「どの店が一番美味しかったと思う?」



 帰りの電車でアヤカに訊いてみた。



「そうねえ……アンキモ軍艦を食べた3件目かしら。」



「僕はあれが好きなんだよ。ぶっかけうどんも腰があって美味しいんだよ。」



「そうなの。」まるで今日あった学校での出来事を息子から聞く母親のような表情を浮かべ、アヤカは続けた。



「それにしても、あなたってやっぱり面白いわ。回転寿司屋で1皿しか食べないって発想、私なんて逆立ちしても思いつかなかったわよ。過去にもやったことがあるの?」



「いいや。」僕は首を横に振った。



「実のところ、ちょっと心配だったんだよ。店員に怒られないだろうかって。でも、最近の回転寿司屋にはデザートとかも置いてるだろ? 寿司を食べに行かないで熱々コーヒーにスイーツ目的で来店する主婦もいるみたいだから、きっと大丈夫なんだろうなって。父がサービス業をやっているんだけど、その父が言うには、『100円に満たない駄菓子でも誠意をもって対応するのが客商売だ!』って。いつかに言ってたことを思い出してね。その真意が今日わかったような気がするんだ。」



「どんな真意かしら?」



「買う値段によってお客を贔屓するなんて、サービス業じゃなくて、ただの仕入れの取引相手でしかないんだよ。サービス業というのは、サービスを提供するのが根本で、お金をもらうことが根本じゃないんだ。」



 電車を降り、改札を抜けたところでアヤカが急に立ち止まった。



「ブラ買うの忘れてたわ。」