朝食にトーストとハムエッグをカウンターテーブルに並んで座って食べ、それから溜まってた洗濯物とアヤカの着替えをプラスして洗濯機を回した。
その間にできた時間で、僕はストラトの弦を張り替え、アヤカはというと、僕の服を着てコンビニへ買い物に出かけた。下着とか生理用品を買うらしい。「お金はどうするのか?」と訊いたが、貯金は十分にあるらしく、アヤカの財布____ブランド物だ____を覗くと、横にすれば立ちそうなほどの1万円札の束が綺麗に並んでいた。
弦の張り替えが終わったのと同時に洗濯機も止まり、それを日当たりの悪いベランダに干す。アヤカの履いていた下着を手に取り、わずかに入り込む陽の光に照らしてみた。煌びやかで物凄く価値のあるものに見えてくる。ぱっと見、ツタンカーメンつけていそうな首飾りにも見えなくもない。別の意味で言うと、マニアの間で高く取引されそうでもある。
ただ、その場合、柔軟剤の香りがするものよりも、使用済みの方が高値で取引されそうだ。すると、この下着はただの下着であって、他人の下着を触っていることに罪悪感を感じることもない。
洗濯物を干している途中に、宗教勧誘の訪問があった。アヤカをそのまま大人っぽくしたような綺麗な女性で、黄色い冊子を手渡ししてきた。付き合いのつもりでそれをパラパラと捲ると、気分を良くした女性は「この世界はすべて神様のご加護によってできている。」という旨の話をした。ならば、アヤカという女性とこういう関係になったのもきっと神のご加護というわけで、そんなご加護ならクソ食らえだと思い、
「家族に信者がいて、僕は排斥者なんです。」
そう言うと、女性は血相を変え、逃げるように退散していった。おそらくもうここには来ないだろう。



