そんな両親の間に生まれたのが私。父が司法書士と宅建の資格を取って二年目、母が新人賞を獲った翌年のことだったわ。



 まあ、ここまで話すと必然的に私の両親はその二人ってことになるわよね。でも、違ったわ。どうして違うのかを話すことが、私にはできないの。あなたを信用してないとか、めんどくさいとか、話し始めるとこのオレンジのソファーを涙で濡らしてしまうとかそういうことじゃなくて、単純にわからないの。



 いえ、わからなくなってしまったのよ。



 なぜ、元行政書士の父と元小説家崩れの母の間に私が生まれていないにも関わらず、私はあの両親を「両親」と呼べるのか。きっと、知ってしまったショックで自己暗示をかけて脳の奥深くに仕舞い込んでしまったのね。その証拠に思い出そうとすると偏頭痛のような症状が出てくるの。