僕は畳の上でごろんと横になった。ちょうど頭に砂壁が当たる位置で、思わず指でカリカリと触ってみた。しばらくご無沙汰だった肌触りで、キラキラした砂がポロポロと落ちてくる。
「あー、もうカリカリせんといて!」
この母の文句も変わらない。縁側にはまだ小さなこいのぼりが立てかけられていて、猫の額ほどの庭にはまだ青いトマトがなっていた。隣のアサガオはもう枯れていて、見るに堪えないが、そういえば東京ではアサガオをまだ見ていないことに気が付いた。
「それで、父さんどう?」
母さんはリンゴをかじりながら「死んだよ。」と静かに言った。



