派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「彼氏じゃない人をこんな時間に部屋に通しちゃ駄目だよ。
 僕が帰れって言ってあげる」
といきなり、インターフォンをつなげてなにか言おうとする。

「やっ、やめなさいよ、莫迦っ。
 あれはうちの社長よっ」
と言うと、

「……なにやってんの、蓮」
と呆れられる。

「あんまり阿呆なことやってると、連れ戻されるよ」
 そのとき、渚がチャイムを連打し始めた。

「開けろっ、蓮子っ」

「……気が短いね、この人」
「うん……」

 いつも時間に追われているせいだろうかな、と思う。

「はいはい、開けますよー」
と勝手に未来が答えた。

「はい、こんばんは」
と鍵まで開けて、渚に挨拶している。

 黙って未来を見下ろした渚は、
「誰だ、この小僧」
と未来を指差し、言ってきた。

 その手をはたいて、未来が言う。

「さすが社長さんだね。
 態度デカイよ。

 僕は、蓮の実家の近所の人。
 おばさんに頼まれて、たまに、ついでがあったら、晩ご飯、配達に来るんだ。

 おばさんに、蓮に男の影があったら、報告しろって言われてる」