「遅かったじゃない、蓮」
と結構話が盛り上がったらしい真知子が少し頬を上気させて言ってきた。
椅子を引きながら、蓮が、
「今、会っちゃいましたよ~。
ほら、例の160円借りてる人に」
と言うと、奏汰が、
「え? 居たの?
どいつ?」
と言ってくる。
「あれですよ」
と蓮はちょうど横に幾つか並んだ観葉植物の向こうを見ながら言う。
植物が邪魔なだけで、意外に席は近かった。
二人が上体を傾け、そちらを見る。
「ほら、あの生意気そうな若い男の人ですよ。
まあ、イケメンって感じの……」
何処が、まあ、イケメンだ、と突っ込まれるかと思った。
好みにもよるが、自分が人生で見た中で、一番のイケメンのような気がしていたからだ。
「あんた……」
と呆れたように真知子が呟く。
「秋津さん……。
あれ、社長だよ」
と奏汰が言った。



