派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 顔を上げたとき、テーブルについている如何にもな紳士がこちらを見て、微笑んでいるのに気がついた。

「九時過ぎには行けると思うから。
 じゃあな」
と渚は勝手に決めて行ってしまう。

 待て~っ、と思ったが、人の話を聞くような男ではない。

 それにしても、同席してる人、何処かで見たような、と思っていると、向こうもこちらを見て、なにか渚に言っていた。

 渚はその年配の男になにか言葉を返し、笑う。

 そんなときの渚は、ちょっと爽やかな感じにも見えた。

 うーん。
 そういう顔をしていると、なかなかいいんだが。

 普段、これ以上ないくらい、押しが強くて邪悪だからな、と思いながら、蓮は席に戻った。