「貴方といい、未来といい。
いきなり現れますよね」
と部屋に入った蓮はすぐにクマを退け、ソファに座る渚に言った。
未来はいきなり目隠ししてきたと言うと、
「新婚夫婦か」
と吐き捨てられる。
蓮が笑い、
「未来は貴方と違って、気配を消せるけど。
あの細い指で未来だって、わかっちゃいますからね」
と言うと、
「指でわかるとか、いやらしいな」
と言ってくる。
「……貴方の発想がいやらしいだけですよ」
「単に嫉妬深いんだ」
新発見だ、と自分で言い、目の前を歩いていた蓮を捕獲すると、膝に抱えた。
「俺は、こうして、ぬいぐるみのクマを抱くみたいに、お前を可愛がってるだけなのに、いやらしいとか心外だ」
「貴方はいつもクマにどんなことをしてるんですか……」
そう言ったあとで、渚を見上げて言う。
「知ってたんですね、私の家のこと」
「お前の素性を調べるまでもない。
普通の人間にしては、金に対して緊張感がないし。
徳田に聞いたんだ。
あと、高坂さんも言ってた」
ああ、レストランで会ったんだったな、と思う。



