「蓮。
 今日は何処か行くか?」

 仕事に戻った蓮が、書類を渡して社長室を出ようとしたとき、渚が言ってきた。

 振り返ると、渚は今渡したものを捲って確認しながら言う。

「いつも俺が遅くて、まともなところで食事とか出来ないからな」

「……いいですよ。
 無理しないで。

 私は渚さんが居てくれれば、それでいいんですから」
と言うと、渚は手を止める。

 こちらを見上げ、
「お前、時折、驚くような殺し文句を言ってくるよな」
と変に感心したように言う。

 いや……そんなこと言った覚えはないのだが、と思いながら赤くなると、渚が手招きしてきた。

「なんですか」
と警戒しながら、じりっと近づくと、

「此処、打ち間違ってる。
 直させろ」
と書類を指差す。

 ああ、はいはい、と側に行き、渚の指差した箇所を見ようとすると、蓮の肩を掴み、顔の位置を下げさせると、頬にキスしてきた。