派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 納得してくれたのかな? と笑いかけたが、
「じゃあ、またね」
と手を挙げ、行ってしまう。

 またね……?

 普通に、その辺で会うから、またね?

 また脅しに来るからね、のまたね?

 一人、階段に残り、蓮は溜息をつく。

 なんか……あの人、真知子さんに勧めるの、不安になってきたな。

 そんなことを考えながら、あーあ、と人気のない階段に倒れて寝てしまう。

 ゴツッと段が頭に当たった。

『蓮……』

 雨は好きじゃなかった。

 余計なことまで思い出すから。

 でも、今は笑える。

 渚さんと土砂降りの中、ティアラを被って、車を押してから。

 無駄に夜景が綺麗だったな、と笑う。

「あの……めちゃくちゃ不気味なんだけど、秋津さん」

 頭の上から声がして、うわっ、と起き上がった。