派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



 美容と健康のために、蓮はたまに階段を上がるようにしていた。

 だが、秘書室のある階までというのは厳しく、途中で、溜息をついて、休む。

 昨日、石井奏汰に呼び出された。

 彼に、その条件は飲めませんと言うと、
『だよね』
と笑っていたが。

 すぐに引き下がるけど、ああいう隙あらばって人が一番怖いんだけどな、と思っていると、奏汰本人が現れた。

 何処かの部署から出てきたときに、たまたま階段の方を見たらしい。

「おはよう、蓮ちゃん」
と下から言ってくる。

 蓮ちゃんと来たか、と思っていると、階段に足をかけ、奏汰が訊いてきた。

「どうしたの?
 元気ないけど」

「いや、あの、その元気ない一端を自分が担ってるとは思わないんですかね?」
と言ってやると、

「あれ? なに?
 もしかして、僕に脅されたから?」
と言ってくる。