派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 まあ、もうちょっと脇田の様子を見よう、と言ってくる。

 考えに耽っているらしく、手が緩んだので、立ち上がった。

 少し離れて振り返る。

「いいですね、脇田さんは」
と言うと、ん? と渚はこちらを見た。

「貴方にそこまで必要とされて」

「そりゃそうだろ。
 俺が嫌がるのを無理やり引きずってきた程の男だぞ」

 ……そんなに嫌がってたのか。
 可哀想じゃないですか。

 いるようでいらないな、渚さんの信頼、と思ってしまった。

「蓮」
「はい?」

「俺の信頼を得たかったら、まず、きちんと宿題を終わらせろ」

「宿題?」

 渚は、くいくい、とおのれを指差し、
「自分から俺にキスするか。
 『愛してます、渚さん』と言うか、どっちかやれって言っただろ」
と言ってくる。

「えーっ。
 昨日、好きだって言ったじゃないですかっ」

「いや、いまいち、愛が感じられなかった」

 なんでだっ。