中に入ると、渚は、もう普通に仕事をしていた。
お茶を置いて出て行こうとすると、
「蓮」
と呼びかけてくる。
「なんですか?」
「お前、秘書辞めるか?」
「……はい?」
いや、と渚は背もたれに背を預け、
「脇田の気が散る」
と言い出す。
「なるほど。
なんで気が散るのか知りませんが。
私が邪魔なら、切るのもありかもしれませんね」
と言うと、こちらの表情を見、
「不満か」
と笑う。
「不満ですよ。
今、総務に戻されたら、一週間くらいで戻されるなんて、こいつ、どんだけ使えなかったんだって思われそうでしょ。
でも、まあ、脇田さんの方が私より大事ですから。
そうされても仕方ないんじゃないですか」
「……冷静すぎて面白くないな」
と言われ、はい? と渚の顔を見る。
ちょっと来い、と手招きされ、側に行くと、無理やり膝に座らされた。



