朝、渚は一度自宅に帰ったので、蓮はひとり、クローゼットの鏡の前で、支度をしていた。
偉く本末転倒な相手じゃない?
という未来の言葉が頭をよぎった。
確かにな、と朝の光の中、目をしばたたき、鏡に映る自分の姿を見る。
『なにかこう、初めて見たときから、しっくりくるものがあったのよ。
何処か似てるところがあるって言うか』
と言った葉子の言葉を思い出していた。
彼女がなにを言いたいのかわかる気はしていた。
なにが、渚と自分で似ているのか。
滅多に鳴らない家の電話が鳴っている。
取らずにそのまま眺めていた。



