派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「偉く本末転倒な相手だけど、いいの?」
と問われて、ぐっ、と詰まる。

「いいよ、僕は別に。
 蓮がそれでいいのなら、ごちゃごちゃ言うつもりはないし、うるさく報告もしない。

 ……ところで、それ、なに?」
と未来は玄関の棚の上に飾ってあったものに気づき、言ってくる。

 あの可愛らしいティアラだ。
 小さな椅子の上に、レースを置いて、その上に飾っている。

「ああ。
 えっと……これは、渚さんがその、お姫様扱いしてやるって言って」

 つい、途切れがちに言ってしまう。

「買ってきたの」

「……変わった人だね」

「そうなのよ……」

「被ってみてよ」
と真顔で、未来は言い出す。

「ええっ。
 嫌よっ」

「いいじゃん、ほら」
と手に取った未来は、さすが、

「本物じゃんっ」
とすぐに言ってきた。

「本物なのよ」

「玄関に飾らないでよ、こんなの。
 幾らだよ」