派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 よく考えたら、意外でもないか、と言う。

「脇田さん、私には全然気がない風でしたよねー」

「なに言ってんの。
 君の方こそ。

 っていうか、僕がその気になってたら、付き合ってたの?」

「はい」
とあっさり葉子は言った。

 ええっ、と声を上げてしまう。

「なんで?
 僕のこと、好みじゃないんだよね?」

「いえ、好みでないことはないですよ。
 長身、イケメン、出世頭で温厚と条件、そろってますし」

 それ、ただ、条件が好みって話じゃ、と苦笑いしたが、葉子のこういうはっきりしたところは嫌いではなかった。

「でも、私、私を好きでない人は好みでないんです」

「……いいね、それ」
と脇田は言った。

 今だからこそ思う。

 いいな、その性格、と。

 手に入らないものなら、最初から、ねだらないというのはいいことだ。

 そんなものに執着しても、自分が疲れるだけたがら。

「ただいま、帰りましたー」

 笑顔の蓮がドアを開ける。