派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 蓮も渚を嫌ってはいないのは伝わってくる。

 本当に嫌だったら、彼女の性格なら、それこそ、頭からビールでもかけそうだからだ。

 だが、まだ自覚がないのなら、放っておこうと思っていた。

 此処で渚の手助けをするほどには心は広くない。

「大丈夫ですか? 脇田さん」

 突然、そんな風に訊いてきた葉子を見る。

「蓮ちゃん可愛いですもんね。
 それにしても、長年一緒に居ると、好みも似てくるものなんですね」

「いや、待って。
 渚と一緒に居たから、好みが似てきたってわけじゃないよ」

 確かに仕事もプライペートも一緒に動いていることが多いが、それで、蓮を気に入っているわけではない、と訴える。

「……っていうか、僕は別になんにも言ってないけど?」
と多少喧嘩腰に訊き返してみたが、笑われた。

 葉子は自分は再び、キーを叩き始めながら、さらっと言ってくる。

「あら、だって、私と居たときと、全然態度違いますよ?
 脇田さんは、面倒見がいいから、ああいう手のかかる、可愛いタイプが好きだったんですね」