……羽交い締めに。
ちょっとしてみたいな、と脇田は思っていた。
渚に渡すのは嫌だが。
この阿呆なカップル……蓮は否定するだろうが、そうとしか見えない二人はまだ揉めていた。
傍目に見ている分には、可愛らしいカップルだ。
キスもまだだというところも。
相手が蓮でなければ、応援してやるんだが、と思いながら、古い友人を見る。
目の前で蓮を膝に乗せるとかしたら、とりあえず、そこのゴミ箱を頭にかぶせてやろう、と秘書にあるまじきことを思いながら、
「とかもく社長、休み時間は終わりですから」
と言い、本当か? と言ってくる渚を押し切った。
昼休みに休みを取っているわけではない。
鷹揚な渚は、自分の休み時間をきっちり計っていたりはしないので、どうとでも誤魔化せた。
「はい、秋津さんも仕事に戻って」
と事務的に言うと、はいっ、と勢いよく返事をして、蓮がこちらに逃げてきた。
ドアを閉めると、自分を見上げ、
「ありがとうございました」
と照れたように言う。



