派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「嫌ですよーっ」
と揉めていると、申し訳程度にノックされ、勝手にドアが開いた。

「社長、そろそろお時間です」
と脇田が感情も交えず、淡々と言う。

「……お前、今、邪魔しに来たろ」

 脇田は溜息をつき、
「社長室で莫迦なことをされないでください。
 外から撮られてたらどうするんですか」
と今にも狙撃されそうな大きな窓を指差す。

「休み時間かどうか、写真じゃわからないんですから。
 というか、休み時間でもやめてください。

 それから、外に声が筒抜けです」

 見れば、葉子が後ろで笑っている。

「そうは言うが、お前。
 この女、俺がせっせと毎晩通いつめても、キスのひとつもさせないんだぞ。

 ちょっとくらいなにかさせてくれてもいいと思わないか?」

「あの……何故、私じゃなく、脇田さんに訴えるんですか」

「お前に言っても無理そうだからだ」
とこちらを向いて言う。

「だからって、脇田さんが私を羽交い締めにして、貴方にどうぞって差し出すとでも思ってるんですか」