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体育館へ戻ると電気がつけられていて、生徒たちが目を覚ましていた。


「愛莉……!」


あたしを見つけて空音が駆け寄って来る。


「あたしをおいていくなんてひどいじゃない!!」


本当に不安だったのだろう、怒った顔をしている空音の目には涙が浮かんでいる。


「ごめんごめん。空音は気持ちよく寝てたからさ」


あたしはそう言い、バッドを枕元へと置いた。


体育館の中を見回すと、辻本先生の隣に数学担当の田井里美(タイ サトミ)先生がいることに気が付いた。


「田井先生!!」


あたしはすぐに田井先生に駆け寄った。


50代の田井先生はとても穏やかな性格をしちえる。


怒ったところは見たことがないけれど、怒りはじめるととても怖いという噂は聞いたことがあった。


「あら、中山さん。無事だったのね」


あたしを見て本当に嬉しそうに笑ってくれる田井先生。


「田井先生も無事だったんですね」


「えぇ。あたしは職員室にずっといたのよ。そうしたらいきなり生徒たちが入ってきて、先生たちを次々と……」


そこまで言い、田井先生は息を吐き出した。


「先生は、それを間近で見ていたんですか?」


「そうね。最初は生徒たちを止めに入ったけれど、彼らは普通じゃなかった。目は真っ赤に輝いて、何を言っても聞こえていないようだったのよ。あたしはその場にいたのに逃げてしまった」


「田井先生。それは仕方のないことです」


そう言ったのは辻本先生だった。