「一旦体育館へ戻りましょうか」


別館1階を調べ終えた所で森本先生がそう言った。


「もう戻るんですか?」


「保健室から10人の生徒がいなくなったことを辻本先生にも知らせないと」


そう言いながら階段を上りはじめる。


それもそうだ。


もしかしたら10人の生徒たちが体育館へ向かうかもしれない。


階段を上って職員室のある2階へと差し掛かった時、不意に物音が聞こえてきてあたしと森本先生は立ち止まった。


あたしはすぐさまバッドを構える。


音は職員室の中から聞こえて来た気がする。


ゴトゴト、ガサガサと大きな動物が動き回るような音。


「誰かいるのかも……」


森本先生が小声でそう言い、職員室へと近づいていく。


もし感染している生徒に出くわしたらどうすればいいんだろう。


森本先生はなにか手段を持っているのだろうか?


そう思いながら、あたしはバッドを持ち直した。


手には汗をかいていて、今にもバッドを滑り落としてしまいそうだ。