保健室の中に足を踏み入れた瞬間、真っ赤になった床が見えた。


血なまぐさい匂いが充満していて、マスクの上から鼻をつまんだ。


「なんてこと……」


森本先生がそう呟く。


後ろから中の様子を伺ってみると、文芸部の生徒たちが横倒しになっているのが見えた。


そのどれもが職員室で見たのと同じで、顔の原型を留めていないものばかりだった。


制服でようやく男女の区別がつく程度だ。


だけど、おかしい。


文芸部の人数は20人ほどいたはずだ。


保健室はすし詰め状態になり、身動きが取れるスペースはほとんどなかった。


それが、倒れているのは10人程度なのだ。


重なり合うようにして倒れていたり、ベッドに横になった状態で動かなかったりしているが、明らかに人数が少ない。


「死んでいるわ……」


森本先生が床に倒れている男子生徒の脈を確認してそう呟いた。


「他の部員たちはどこへ行ったんでしょうか?」


あたしがそう言うと、森本先生はようやく人数が少ない事に気が付いたようだ。


「そうね。そういえばおかしいわね」


そう言い、首を傾げる。