あたしは枕元に置いてあったバッドを手に持った。


「危ないのは先生も同じですよ? いざとなればこれで戦います」


そう言うと、森本先生は呆れたような笑顔を浮かべた。


実際は1人で見回りに行くことが怖かったのだろう、その表情の中には安堵の色も見られた。


「ありがとう。じゃあ、一緒に行こうか」


そう言い、あたしと森本先生は2人で体育館を出たのだった。


体育館の外は電気がついていて、昼間と変わらない明るさだった。


シャッターを閉められているからか、外からは何の物音も聞こえてこない。


その静寂は一瞬背筋が寒くなるほどだ。


「学校内全部を見回りするんですか?」


「ううん。生徒の教室は辻本先生が見てくれているはずだから、あたしはそれ以外の場所を見回るつもり」


森本先生はそう言いながら、まっすぐ階段へと歩いて行く。


一番最初にどこに行くのか、すでに決めてあるようだ。


「森本先生、どこから行くんですか?」


そう聞くと、階段を下りる途中で森本先生が立ち止まった。


「保健室よ」


その言葉にあたしは一瞬言葉に詰まってしまった。


「で、でも保健室は……」


「辻本先生から事情は聞いてる。文芸部の彼らが感染していたとしても、様子を見に行ってあげなきゃ」


森本先生が当然だという様子でそう言うので、あたしは何も言う事ができなくなってしまった。