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しばらく狭いマットの上で眠っていたあたしだったが、物音が聞こえてきてすぐに目を覚ました。


一瞬自分の部屋じゃない事に焦り、そしてすぐに事態を理解した。


ここは体育館だ。


あれは夢ではなく、本当に起きた出来事だったんだ。


心に重たい気持ちがのしかかって来る前に話し声が聞こえてきて、あたしは視線を巡らせた。


1つの懐中電灯が動いているのが見える。


それを持っている人物は暗くて見えないけれど、照らし出している先には森本先生がいた。


森本先生はマットから身を起こすと、懐中電灯を受け取る。


そこでようやく相手の顔が見えた。


辻本先生だ。


そう言えば、夜中は交互に見回りに行くって言ってたっけ。


眠る前に先生が会話していたことを思い出して、あたしはそっと起き上がった。


空音はまだ心地よさそうな寝息を立てている。


中には眠れない生徒もいるだろうけれど、みんな静かだった。


「あら、どうしたの?」


あたしが起き上がった事に気が付いた森本先生が、小さな声でそう聞いて来た。


「あたしも見回りについて行っていいですか?」


「見回りに? 危ないわよ?」


森本先生は少し表情を硬くしてそう言った。