2人の先輩が喧嘩を始めたことで体育館の中は静まり返っていた。


辻本先生が力付くで2人を引き離したものの、その余韻はまだ続いている。


あたしと空音は体育館の壁を背もたれにして、ボンヤリと時間を潰していた。


先生たちはシャッターを壊すために動いていたが、びくともしていないようだ。


「どうしてこんなことになっちゃったんだろうね……」


空音がそう呟いた。


「そうだね……」


昨日まではごく普通の日常があったはずだった。


何も変わらない学校生活を送っていたはずだった。


それが、たった1日でこんなにも変わってしまった。


あたしたちは校内に取り残され、殺人ウイルスの恐怖におびえているのだ。


それはあまりに現実味がなくて夢を見ているような感覚だった。