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あたしたちは保健室の鍵を閉め、無言のまま図書室へと向かっていた。


辻本先生も空音も何も言わない。


20人の文芸部の生徒たち全員が感染しているかもしれない。


その可能性はあたしたちを絶望へと突き落とすものだった。


このまま学校から出る事ができなければ、きっと生徒全員が感染してしまう。


やがて殺し合いが始まる様子が目に浮かんできて、慌ててその映像をかき消した。


図書室へ戻って来ると、生徒たちはみんな疲れた表情を浮かべていた。


いつもならもう家に帰っている時間だ。


それが学校に監禁状態になり、精神的にまいっているようだった。


「辻本先生、他の生徒たちはどうでした?」


森本先生にそう聞かれて、辻本先生は左右に首を振った。


それだけである程度理解できたのだろう、森本先生は大きく目を見開き、そして泣きそうな顔になってしまった。


「今はとにかく、ここにいる生徒たちを守る事を優先させましょう。図書室でも十分スペースはあるけれど、災害時に備えた物資は体育館にある」


「そうですね。それでは移動しますか?」


森本先生が辻本先生へ聞く。


「そうしましょう」


辻本先生はそう言い、頷いたのだった。