「辻本先生！」


図書室を出てすぐに声をかけると、辻本先生は驚いたように目を丸くして振り向いた。


「お前ら、危ないから図書室に戻ってろ」


「そう言われると思ってました。だけど今危ないのは先生も同じですよね？」


「俺は平気だ。男だし、お前らの先生なんだからな」


「今は生贄だって言ったのは先生ですよ？」


あたしがそう言うと、辻本先生はグッと言葉に詰まってしまった。


「武器なら持ってきました」


あたしはそう言い、サインバッドを辻本先生に見せた。


杉崎高校の卒業生がプロの野球選手として活動していて、そのサイン入りのバッドが図書室に飾られているのだ。


それを少し拝借してきた。


「あたしも」


空音がそう言い、分厚い辞書を見せた。


「お前らなぁ……」


呆れたようにため息を吐き出しながらも、辻本先生はどこか嬉しそうな表情をしている。


「よし、それなら一旦職員室へ行こう。あそこならもっと使えるものがあるからな」


辻本先生はそう言い、２階へと足を進める。


「せ、先生職員室は……」


空音が慌ててそう言う。