「森本先生、どうなんですか?」


男子生徒が森本先生に訊ねる。


森本先生は少し戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに先生の顔つきに戻った。


「よし、じゃぁこれから1人ずつ診て行ってあげる。みんな順番に並んで!」


森本先生がそう言い、椅子に座った。


見たこともないウイルスの診断ができるなんて思えなかったが、森本先生に診てもらうだけでも気分が違う。


先生はきっとそう考えたんだろう。


「君はとても元気そうね。きっと大丈夫感染なんてしてないわよ」


「本当ですか!? 森本先生ありがとう!」


森本先生大丈夫と言われ、涙を浮かべている生徒までいる。


その様子をみていると辻本先生が図書室を出て行くのが見えた。


「空音、ついて行く?」


「うん、行こう」


今は生贄という立場になっている辻本先生を1人でどこかへ行かせるわけにはいかなかった。


あたしたちは辻本先生に怒られる覚悟でその後を追いかけたのだった。