体格のいい男子生徒ならまだわかる。


しかし、女子生徒まで同じように力づくでロープを引きちぎったのだ。


それを見た森本先生は愕然とした。


この子たちは普通じゃない。


すぐにそう感じとり、ベッドの下に隠れたのだ。


ベッドの下の隙間から見ていると、ロープを千切った生徒たちは互いに傷つけはじめたのだ。


殴り合ったり蹴り合ったり、時には相手の体に噛みつき、皮膚を引き裂いていたと言う。


保健室に飛び散っていた血液は、生徒たちのものだったようだ。


「どうしてそんなことに……」


すぐには信じられない先生の説明に、あたしはそう呟いて空音を見た。


空音は今の話を聞いて青い顔をしている。


「わからないわ。あたしにも、なにがなんだか……」


森本先生はその光景を思い出したように強く身震いをした。


森本先生が嘘をついているようには見えない。


「でも、その生徒たちはどこへ行ったんですか?」


保健室の中には、隠れていた森本先生しかいなかった。


「わからないの。みんな保健室から出て行ってしまったから……」


「それって、ヤバイんじゃないの?」


空音があたしの肩をつついてそう言った。


「だよね。殴り合いをしてた連中がどこにいるのかわからないなんて、危ないと思う。下校時間になったからって素直に帰るとも思えないしね」


あたしは空音の意見に賛同した。


「森本先生、生徒たちを探しに行きましょう? あたしたちが一緒にいるからきっと大丈夫ですよ」


あたしはそう言い、立ち上がったのだった。