渋田さんの自殺が影響していることは、誰だってわかっていたことだった。


先生たちの間では生徒の心のケアを一番に考える事が重要だと、会議でも決まったばかりだった。


特に、渋田さんが飛び降りた時、その下に偶然居合わせてしまった生徒たちについては、注意が必要だった。


「渋田さんの自殺を目の前で見た生徒たちが全員、保健室に来たのよ」


あたしは保健室にいた男女を思い出した。


あの人たち全員が渋田さんの自殺の目撃者だったのだ。


「死にたい、死にたいって、彼らは繰り返してたわ。あたしが何を言っても何をしても全く聞こえていなくて、学校の保健室では手に負えないと判断したのよ」


それから森本先生は保護者を呼んで迎えに来てもらう準備をしたり、保護者に電話が繋がらない生徒を医者へ連れて行く用意をしていたらしい。


けれど、その間生徒たちの容態は更に悪化し、保健室の中で暴れはじめる生徒が出始めた。


そこで仕方なく辻本先生と協力して生徒たちをベッドに拘束したのだそうだ。


後から問題になる行動かもしれないと思ったが、このままでは本当に自殺してしまう。


生徒の命を守るために決断したことだったそうだ。


しかし、それもすぐにダメだと気が付いた。


拘束した生徒たちが突然目を見開き唸り声を上げ始めたかと思うと、次々とロープを引きちぎりはじめたのだそうだ。