「保健室に寄ってから行く?」


空音にそう言われて「いい?」と、あたしは聞く。


「いいよ。死ぬほどひもじいいわけじゃないから」


空音が大げさにそう言うので、あたしは思わず笑ってしまった。


しかし、保健室に近づくにつれてどんどん無口になっていく。


まだ昼のような状態が続いていたらどうしようか。


そんな不安が胸の中に渦巻いていた。


「森本先生、いますか?」


2回ノックをして声をかける。


しかし中から返事はなかった。


耳をすませてみても何も聞こえてこない。


放課後になったからみんな帰ったのかもしれない。


「どうする?」


空音が聞いてくる。


誰もいないならそのまま帰ろうか。


そう思った時だった。


なにか嫌な予感が胸をかすめた。


保健室にいた生徒たちを思い出す。


部屋の中でまるでゾンビのように徘徊し、「死にたい、死にたい」と繰り返していた。