その光景にあたしは思わず後ずさりし、植木に身を隠していた。


「誰か!! 助けてくれ!!」


そんな叫び声を上げながら走って来る。


校長はそのまま門を抜けてシャッターの閉まっている校舎へ入ろうと必死だ。


「なに、あれ……?」


あたしは唖然として校長を見つめた。


自分でシャッターを閉めておいて一体なにを……。


そう思ったときだった。


校長を追いかけていた何十人という人間が校門まで押し寄せて来たのだ。


その目は真っ赤に輝いていて、あたしは一瞬にして感染者を思い出していた。


校長が慌てて生徒玄関へと走るのが見えた。


あたしは咄嗟に空音の手を引き、その後を追いかけていた。


何かを考えている余裕なんてない。


外で何が起こっていたのかなんて、考えたくもない。


必死に走り生徒玄関まで辿りつく。


あたしと空音が必死に開けた穴から校長の顔が見えた。


「悪いね、君たち」


校長はそう言うと、掃除道具を入れているロッカーでその穴を塞いだのだ。


「ちょっと、なにするんですか!!」


あたしは慌ててロッカーを両手で押した。


しかし、ロッカーの向こう側に次々と物を置かれているようでびくともしない。


あたしの手を握りしめていた空音の手が離れた。


見ると、真っ赤な目をした何百人と言う若者たちがすぐそばに迫ってきているのだ。


それだけじゃない。