カランッと、軽い音を立ててバッドが地面に転がった。


腕が痛くて持っている事も出来なかった。


シャッターは大きく口を開け、その向こうに見えている生徒玄関のガラスにそっと触れる。


そこは太陽の熱で熱くなっていた。


あたしは指先でその熱を感じながら、下りている鍵を開けた。


カチャッと小さく音がしてガラス戸が開く音がする。


取っ手に手をかけてスッと横に引くと……すんなりと、その戸は開いたのだ。


「あ……」


体に風を感じた瞬間、思わずそう声が漏れた。


「う……そ……」


空音が泣き笑いの顔を浮かべる。


「外……だ……」


手を伸ばし外の空気に触れてみた。


穏やかな、夏の兆しを感じる空気だ。


「外だ!! 外だよ空音!!」


あたしはそう言い、飛び跳ねながら空音に抱き着いた。


空音は持っていた金槌を落とし、あたしの体を抱きしめる。


「やった! 出られるよ愛莉!! あたしたち、外に出られるんだよ!!」


空音の目から大粒の涙がこぼれだす。


それにつられるようにして、あたしも泣いた。


大声を出して、学校中に響き渡るような声で泣いたのだった……。