これ以上辻本先生の辛そうな顔を見ている事ができなかった。


なにより、辻本先生はあたし達の為を思ってしてくれたんだから。


「潜伏期間は1日から2日。辻本先生が撒いたウイルスが原因なら、ゴールデンウィーク中に発症しているはずです!」


そう言うと、田井先生と森本宣氏は驚いた顔であたしを見た。


まさか辻本先生をかばうとは思っていなかったのだろう。


「そうかもしれないけれど、これは大変なことなのよ?」


森本先生があたしを諭すようにそう言った。


「わかってます! わかってるから、言っているんです!」


仲間割れが起きて、これ以上不安が増えるもの嫌だった。


なにより、辻本先生を1人にするのが嫌だった。


こんな時にまで好きとか嫌いとか、自分の感情を持ち込むのは子供だと思われるかもしれない。


でも、あたしは辻本先生に生き残ってほしいんだ。


必死で訴えかけたことにより、先生たちは諦めたようにため息を吐き出した。


「感染ない生徒がいる原因はわかりました。でも、問題は……」


田井先生はそう言い、シャッターを見つめた。


「外に出る方法……」


空音が呟くようにそう言った。


生存しているのはあたしたちだけ。


感染もしていない。


そうなると、残るは外に出るという問題だけが残るのだ。


固く閉ざされたシャッターに触れて、あたしはその冷たさにゾッとしたのだった。