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結局、お昼はお弁当を食べる暇なんてなくなってしまった。


渡り廊下を走っている最中に落としてしまったお弁当は、グチャグチャだし、驚きすぎて食欲はなくなってしまった。


「一体どうしたんだろうね」


1階の販売機でジュースを購入して教室へと戻りながら、あたしは言った。


「わからない。あの子渋田さんの親友だったのかな」


空音はパックのイチゴジュースをひと口飲んでそう言った。


おそらくそうなんだろう。


親友の死が原因で情緒不安定になっていると考えるのが一番納得できる。


この多感な時期に親友の自殺というのは、あまりにも大きいだろう。


複雑な気持ちを抱きながら歩いていると、保健室から声が聞こえてきてあたしたちは立ち止まった。


「今日は身体測定だっけ?」


空音がそう聞いてくる。


「違うんじゃないの?」


あたしはそう答えた。


普段保健室がにぎやかになることなんてない。


騒いでいれば必ず怒られるし、高校生にもなってそれが理解できない生徒は少なかった。