「な、なにも特別なことなんてないだ」


そう言い、すぐに顔をそむける。


その顔は少しだけ青ざめているように見えた。


「……辻本先生?」


森本先生も異変に気がついて首を傾げた。


「もう少し見回りに行ってきます」


辻本先生はそう言い、立ち上がった。


「見回りって、学校内にはあたしたち以外にはもういませんよ?」


森本先生が怪訝そうな表情になる。


「ま、万が一、生き残りがいるかもしれないでしょう」


そう言い、そそくさと歩き出す。


その様子は明らかに不自然だ。


辻本先生はさっきから何かを隠しているようにしか見えない。


「ちょっと待ちなさい」


田井先生の低い声で辻本先生は立ち止まった。


まるで生徒をしかる時のとうに、仁王立ちをして辻本先生を向き合う田井先生。