「何言ってるの?」


田井先生が慌てたようにそう言って来た。


一瞬にして生徒会議室の様子が思い出された。


「違うんです。そう言う意味じゃなくて、これだけ死んでいたらウイルスだって学校中に蔓延しているハズです。なのに、なんであたしと空音は体に異常が出ないのか、不思議じゃないですか?」


そう言うと、空音が自分の両手を見下ろした。


「たとえば、祐矢先輩が言っていた通りウイルスがあっという間に進化して、発症期間が短くなっていたとしたら、よけにおかしいですよね?」


あたしは言葉を続けた。


「それなら、祐矢先輩とアラタ先輩もだよね? あの2人も感染はしてなかった」


空音が言う。


「もしかしてあたしたち、他の生徒と違うんじゃないかなって、思ったんです」


「ウイルスに対抗するための抗体を体に持っていたってこと?」


森本先生が興味深そうな表情を浮かべてそう言った。


「その可能性もあると思いませんか?」


「確かに、そうよね……あなたたち2人は具合も悪くなっていないし、なにか特別なのかもしれないわ」


田井先生が言う。


「ねぇ、辻本先生はどう思いますか?」


そう聞いた時だった。


辻本先生はハッとしたように顔を上げた。


なにか考え事でもしていたようだ。