大量の死体を目の当たりにしたあたしたちは、渡り廊下まで戻ってきてそこに座り込んでいた。


誰も、なにも言わなかった。


ただすすり泣きの声と、時々吐き気をこらえるような苦しげな音が聞こえて来るだけだった。


「……本当に、学校内には俺たちだけなのかもしれないな」


辻本先生がようやく口を開いてそう言った。


そうかもしれない。


きっと、みんな同じ事を考えていたのだろう。


誰も否定しなかった。


感染者も、そうじゃない生徒も、殺し合いや自殺によって死んでしまった。


残っているのはあたしたちだけ……。


そう考えた時、あたしは不意に違和感を覚えた。


「どうしてあたしと空音は生きてるの……?」


その言葉に空音が顔をあげてあたしを見た。


あたしは空音の真っ赤に充血した目を見返す。