その人物は間違いなく今朝あった、あの子だったのだから。


背中を向けていても、おさげ髪でわかる。


「なにしてるの、あれ……」


彼女は外へと身を乗り出していて、足が外れればすぐにでも落ちてしまいそうな状況だ。


周囲の生徒たちが必死で彼女の足や体を押さえて止めている。


「せ、先生に言わなきゃ!」


空音の一言であたしはハッと我に返った。


そうだ、茫然として突っ立っている場合ではない。


あたしと空音はすぐに職員室へと駆けだした。


職員室は二階の別館にある。


あたしと空音は早足で2階へ下りて渡り廊下を走り職員室の扉をノックした。


「先生! 大変です!」


職員室の中はお昼の風景だったか、かまわずそう言った。


今にも生徒があの窓から飛び降りてしまいそうなのだ。


誰でもかまわない、すぐに来てほしかった。


「君たちは1年B組の生徒? 辻本先生なら……」


辻本先生の居場所を説明しながら近づいてくる漢文の先生の腕を掴み、あたしは職員室を出た。


先生は驚いた声をかけて来るけれど、止まっている暇なんてない。


持っていたお弁当箱も、気が付けばどこかに落としてきてしまった。


まぁいい。


そんなの後で探しても問題ない。