辻本先生はハッとした顔で祐矢先輩を見る。


「どういうことだよ。死体は感染していなかったって言ってたのはお前だろ?」


アラタ先輩がそう言う。


あたしたちが体育館に避難する前からあった死体なら、感染はしていない。


なぜなら、感染から発症までの期間がとっくに過ぎているからだ。


あの死体が感染者だったとすれば、あたしたちはもう発症している。


それが、今までの考え方だった。


だから安心していた。


音楽室に移動すれば、また少しの間安全だと思っていた。


それなのに……。


辻本先生は祐矢先輩の言葉にゆっくりと「その、通りだ」と、頷いたのだ。


「はぁ!? 意味わかんねぇし!!」


アラタ先輩は声を荒げる。


その気持ちは十分に理解できた。


あたしもすごく混乱していて、心臓がいつもの倍の速さで動いているのがわかった。