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体育館の中に残ったのはあたしと空音、祐矢先輩とアラタ先輩。


それと先生たちだけだった。


「結局残ったのは俺たちだけかよ……」


アラタ先輩がそう言い、歯を食いしばった。


「感染した死体があったんだ、逃げて当たり前だ」


祐矢先輩は相変わらず冷静な口調でそう言った。


「だったらなんでお前は逃げないんだよ」


「おそらく、その死体は感染していないからだ」


ハッキリと言い切った祐矢先輩。


森本先生はその言葉に何度も頷いた。


「そうね。ウイルスは1日から2日で発症する。みんなはもう4日も体育館の中で生活をしているもの」


「どうしてそれを言わなかったんですか?」


空音が少し声を荒げてそう言った。


「無理だよ。言ったところで全員を引き止める事は不可能だ」


祐矢先輩がそう言った。


そうかもしれない。


疑心暗鬼になって恐怖を抱き続けている生徒の精神状態は、もう極限状態だ。


そんな中見つかった死体。


これで体育館から逃げないという選択肢をする生徒は、あたしたちくらいなものだ。