だれもが辻本先生の次の言葉を待っている。


「放送室の中で、首を吊って自殺していました」


そんな言葉が体育館中に響き渡る。


今まで凛とした表情を浮かべていた田井先生が、その表情を崩した。


今にも泣き出してしまいそうな顔で俯く。


「嘘でしょ……」


誰かがそう呟いた。


「その死体って、一体いつからあったんだ?」


「あたしたちがここに逃げ込む前からあったの?」


「自殺したら、ウイルスは空気感染するんだろ!?」


あちこちから混乱した声が聞こえてくる。


あたしは自分の体から血の気が引いていくのを感じていた。


足元がグラグラと揺らめき、まるで海の上に立っているような感覚だ。


「死体がいつからあるのかはわからない。だけどここにいるみんなはまだ感染していない。きっと、大丈夫だ」


辻本先生はそう言うが。声に張りがなかった。


自身を持って大丈夫だと言い切ることができないのだ。


「嫌だ……嫌だよ!!」


女子生徒がそう言い、叫び声を上げて体育館の外へと走り出した。


森本先生が止めよとしたが、その体は突き飛ばされて体育館の床に転がってしまった。